復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 皇太子は帝国全ての令嬢の、憧れの王子様と言われている。

 皇族の象徴である黄金の髪に、母譲りの青い瞳。美しい彫刻のような顔に、いつも柔和な笑みを浮かべていて、綺麗な人だと思う。

 話し方も穏やかでそつがない。

 だが、デピュタントで踊ったとき、目の奥は笑っていないと気づいた。

(なんとなく怖かったわ……。戦争狂と言われる大公よりも、ずっと)

 ふと前を向くと、目の前に座っているアレクサンドと目が合い、慌てて瞼を伏せた。

 情熱を秘めた燃えるような瞳に、心に火が灯されるようだ。ドキドキと高鳴る胸の鼓動に動揺してグラスの水を飲む。

 大きくて肩幅が広くて、近くで見るとなおさら男らしく感じた。

(大公様が帝国を守ってくれているんだもの)

 西国は帝国の北西にある油田を狙っている。その油田から出る油は純度が高く、良質な油田がない西国は喉から手がでるほど欲しがっている。

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