復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 いっときは占領されてしまったらしい。大公があきらめずに戦ってくれるおかげで、帝国は庶民でも冬を越せるのだ。

 それなのに戦争狂だなんて、酷い噂だと思う。

 あいさつしか交わしていないので、彼がどんな人なのかルイーズにはよくわからないが、少なくとも戦争好きではないと知っている。



 晩餐が終わり、ルイーズは先に部屋に下がった。

 そのまま、庭園に出て風にあたる。

 季節は秋、夏の熱気がいくらか和らいだ優しい風が、ルイーズの銀色を髪を揺らす。

 ここゴーティエ家の領地は、帝国の中でも特に平和な地域と言われている。

 なに不自由なく、両親の愛に包まれて幸せに暮らしてきた。

 幸せ者だと、自分でもわかっている。

 でも、この幸せが半分になってもいいから、母の命を長らえてもらえないだろうかと、ルイーズは母の愛する庭園を見つめながら思う。

 豪華なドレスなんて着なくてもいい。

 ただ、両親の笑顔が目の前にさえあれば、それだけで。

 しばらく風にあたった後、邸に戻った。

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