復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ルルもなんとなく気になり、首を伸ばしてマロ指す先を覗いた。

 その場所は、ルルが倒れていた洞窟の脇に流れる沢の下流のようである。

 偶然なのか……。

 胸騒ぎがして、あらためて客が手にしていたカメオをちらりと見た。

 朝食の後にカメオを並べていたときは、ルルはあえて見ないようにしていた。気にはなったが、並ぶアクセサリーを凝視しては失礼だと思ったからである。

 金や細かい宝石で縁取られた中心にあるカメオは、濃いブルーを背景にして貴婦人の横顔が白く浮き出ている。

 とても美しい女性だ。

 ルルは吸いつけられたように、カメオから目が離せなくなった。

(この女性……。私、たぶん、知っているわ)

 柔らかく微笑んでいる横顔が、脳内で一幅の絵に変わっていく。

「そうよ……。あの絵をもとにしてカメオを作ってもらったの」

 小さくひとりごち、震える手を伸ばした。

「ルル?」

 声に振り向き、目が合った途端に涙が溢れた。

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