復讐は蜜の味　～悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで～
　夕べ。いつになくなかなか寝つけなかった理由。頭の奥で、記憶が暴れていたのだ。

「お、お父様」

　駆け寄るゴーティエ公爵にルルが抱きつく。

「ルル。思い出したのか」

「はい。はい、お父様」



＊＊＊



「では、魔獣に助けられたのか？」

「はい。灰色の大きなウサギの形をした魔獣です」

　大公がウサポンという魔獣の補足をする。

「ごくまれに山からおりてくるんですが、基本的におとなしい魔獣です」

　馬車が襲われ、横転した後、外に投げ出されたルルことルイーズは、そのまま気を失った。

　次に目を覚ましたとき、辺りは一変していて馬車は大破し、魔獣同士が戦っていたという。

　ルルが倒れていた場所は、たまたま低木の陰で、体は大きいがかわいらしい灰色のウサギがすぐ隣にいて、そのウサギも魔獣同士の戦いを覗いていた。

　そのウサギは子どものウサポンだったのだ。

　子どものウサポンに促されるようにして背中に乗り、ウサポンの巣である洞窟で過ごした。

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