復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 彼らの汗があればこそ、帝国は成り立っているというのに。

「ルル。大丈夫か?」

 悔しさのあまり、拳を握っていたらしい。

 震える手の上に父の手が重なった。

「お父様。はい、私は大丈夫です」

 親子共々無事に生きていた。その喜びに気持ちを集中させようと、気持ちを落ち着ける。

(私は最初から、西の塔ではなく魔獣の森に放置される計画だったなんて、今は言えないわね)

 話してしまえば、父はディートリヒを斬りつけてしまうだろう。

 悔しいが、なにもできないのが現実だ。

 相手は権力の頂上にいる皇帝だ。

 唇をかんで悔しさを紛らわせていると、ふいに大公が「考えがある」と言った。



「ゴーティエ公爵、ルルと結婚させてください」

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