復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
毎日のように祝辞に訪れる隣国や帝国に属する王国からの使節団の接待に、国内の貴族との謁見。度重なる会議に山積みの公務。一日も休みがない。
人まかせにできない質であり、いくら時間があっても足りない。
疲れは溜まりに溜まり、隙をみて眠れればいいが、それもできない。
彼は重度の不眠症である。
胸の奥にうずく不安をどうすることもできないでいた。
(ゴーティエのなにがそんなにいいんだ!)
民衆が、あれほど反発してくるとは想定外だった。
祖父、ランベール公爵の動きも芳しくない。
ルイーズ事件直後は大半の貴族の理解を得たはず。
だが、ランベール家の公子が、秘密裏に奴隷オークションを開催していたのが明るみになると、一気に情勢が変わった。
(お前たちも便利に奴隷をつかっているくせに)
帝国は表向き奴隷を認めていないが、ディートリヒは黙認していた。奴隷は必要悪だと信じて疑わない。