復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
『兄上には申し訳ないないが、相談したい事案が山ほどある。宮殿には腕利きの治療師も大勢いる。こちらに来てもらった方が治りも早いと思うぞ』

 ピエールは澄まして『どんな事案かお伺いしてもよろしいでしょうか』と、生意気にも詰め寄ってきた。

『お前には言えない』

『ですが、代理人として任されておりますので』

 最後まで食い下がってきた。

「どいつもこいつも」

 忌々しさに書類を机に叩きつけ、席を立つ。

「陛下、どちらに行かれるのですか?」

「バカなのか? 黙ってついてくればいいだろ。なぜ聞く!」

 無能な呼ばわりされた近衛兵は「もうしわけありません」と、頭を下げる。

 この男はつい最近も失敗したばかりだと、ディートリヒは軽蔑の目を向けた。。

 大公領でのドラゴン祭で爆発騒ぎを起こすはずが、爆発どころか早々にバレて失敗したという。烏城に忍び込むこともできず、結局丸腰のまま尻尾を巻いて帰ってきた。

「情けないやつめ。あやまることしかできないのか」

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