復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「どうしてあの下品さを教育出来ない? 侍女長。お前がこんな無能とはな。心からがっかりだ!」

 後ろから追いかけてくる侍女長は謝るばかりだ。

「申し訳ございません」

 床に這い蹲る侍女長の頭を踏んでやりたい気分だが、すんでのところで堪えた。

 自分で手を下す必要はない。

(侍女長を監督するのは侍従長だ。後でしっかり罰を与えるよう指示しよう)

「立ってくれ、侍女長。大声を出してすまなかった」

「陛下……」

 涙にまみれた顔を上げる侍女長の肩は震えている。

 腰を落とし、侍女長の肩に手をあてる。

「君には期待している。なんとか上品な座り方だけでもマスターさせてくれ。頼むな」

「は、はい陛下。必ず」



 やれやれと溜め息をつきながら執務室に入ると。

「陛下、こちらを」

 ほぼ同時に、侍従が慌てた様子で駆け込んできた。

「どうした。走るなんてみっともない」

「申し訳ありません。と、とにかく、これを」

 差し出された号外を手に、ディートリヒは目を見開いた。

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