復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 泣いて喜んでくれたネージュは、われに返ったように今度は混乱していた。

「ルル。いや、ルル様って言ったらいいの? あ、大公夫人? えー、どうしたらいいの!」

「今まで通りでいいですから」

「そんなのだめだよ!」

 侍女仲間も、侍女長も我が事のように喜んでくれる姿を見ると、実は復讐のための契約結婚だという後ろめたさが疼いたが、それ以上にうれしかった。

 ルイーズとして、一度は死んだに等しい人生だ。

 これからは苦労も含めて、生きることを楽しみたいと思う。

 カンタン夫人も駆けつけてくれた。

「ルル、本当におめでとう」

「ありがとうございます。夫人のおかげです。勇気をくれなかったら、お城にも来れませんでした」

 抱き合って泣いて。

 母の愛を思い出した。



 そして迎えた結婚式の当日。

 ルルの本当の父ゴーティエ公爵は魔法薬で髪色や瞳の色を変えて変装し、式を見届けたのである。

 ふたりの結婚を泣いて喜んだのは言うまでもない。

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