復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ネージュや侍女たちに寄ってたかって磨きあげられた肌は艶々だ。

 体からほんのりと香る香油の甘い匂い。

 薄いピンク色をしたレースの寝間着はとっても素敵だけれど、体の線が見えるし、いかにも準備万端で待っているようで恥ずかしかった。

 城内はまだ祝いの宴が続いていて、アレクサンドがいつくるのかはわからない。

 椅子から腰を上げ窓辺に立ち、城下を見下ろした。

(楽しそう)

 街はドラゴン祭のように熱気が続いているようで、風に乗りどこからか音楽も聞こえてきた。

 こんなに幸せでいいのかなと、思わなくもない。

 自分は先の皇帝を毒殺したと言われる悪女ルイーズだ。

 事実は違えど、一度貼られたレッテルは、そう簡単に消えない。

 この結婚はディートリヒを欺くための契約結婚だから、アレクサンドが復讐を果たしたら解消する。

 おそらくそのときには自分がルイーズだと公表することになるから。

「気持ちいい風だな」

< 155 / 202 >

この作品をシェア

pagetop