復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ハッとして振り返ると、いつの間に入ってきたのかアレクサンドがいた。

「ようやく宴会から抜け出せた。あいつら夜通し飲み続けるつもりだな」

 やれやれと溜め息をつく彼も結構な量を飲んだのかもしれない。ワインの甘い香りがした。



「疲れただろ?」

 ルルは正直に「はい」と答えた。

「だよな。俺も疲れた」

 にっこりと微笑んだアレクサンドの赤い瞳は、あたたかい温もりに満ちている。

「ん?」

「閣下の瞳はルビーのようですね」

 彼の赤い瞳は恐れられていた。

 戦争狂と言われても我関せず、不愛想だったのもあるが、ディートリヒがよく言っていたのだ。

『狂気を持った人間の瞳は赤いと言われている。恐ろしい兄だ。あんな目をした皇族は過去にいない』

 ドラゴンの血を受け継いだ初代皇帝が、燃えるような赤い瞳だったというのは語り継がれた事実なのに、ディートリヒは初代皇帝は特別だと吐き捨てた。

『赤い目は帝国を滅ぼすという古くからの言い伝えがあるんだ』

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