復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 彼はなんとしても兄を陥れたかったのだろう。

「赤い瞳は怖いだろう?」

「まさか。とっても綺麗ですよ?」

 もしかしてディートリヒが言っていたようなことを、彼は言われ続けていたのか。

 慌てて「ちっとも怖くなんかないです」とつけ加えた。

 アレクサンドはクスッと笑う。

「まったく。ルルは口がうまいな」

「でも閣下、どうして黒髪にしていたんですか?」

「これだと戦場で目立つだろ? 標的にされちゃうからな」

 茶目っ気たっぷりに言ったあと、彼はディートリヒの目をかわすためもあると言った。

「なるほどそうなんですね」

 それにしても、黄金の髪の彼は別人のように見える。

 ふと、我が身を鑑みた。

 いつしかこの髪と瞳の色は戻るのだろうか。

 ルイーズは月の女神と称されていた。

 そのゆえんは、青みがかった銀髪と深いアメジストの瞳に、生気のない抜けるような白い肌のためだった。

 もしあの頃の自分だったら、彼と自分は太陽と月だったなと思う。

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