復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
(人々を照らす太陽の彼と、暗い夜空が似合う私……、か)

 太陽と月は、決して交わらない。

 背中合うふたりの進むべき道は、真逆に進んでいるのだ。



「あの、もしかして復讐って」

 私のためですか? と心で続けた。

「ん? 復讐?」

「なにをするのかなって思って」

 いや、そんなはずはない。

 彼は父の仇を取るのだ。

「ルルは? どうしてほしい?」

「え?」っと見上げると、彼はルルの腰を抱き寄せる。

「私は――」

 どう答えていいか戸惑った。

 ディートリヒが許せないという気持ちはあるが、復讐したいかと聞かれると、それも違う気がした。

「彼には皇帝の座から降りてほしいです」

「それだけでいいのか? 君の名誉は俺が回復するが、心臓をえぐりだしてやりたいとか、手足をもいでやりたいとか」

 挙げる例がどれも恐ろしい。

「怖いですよ、閣下」

 あははと笑ったアレクサンドは、ツンとルルの額を押した。

「こら、いつまで閣下を続けるつもりだ?」

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