復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 どきどきと胸が高鳴る。

「なんて呼ぶかはわかっているだろ?」

「――アレックス?」

 彼は「そうだ」と言いながら顔を近づけた。

 今日二度目のキスは、とても甘い味がした。

「酒の匂いを消すためにブドウ味の飴を舐めながらきた」

 耳もとで「お前とキスをするために」と囁く。





***





「聞きたくありませんが、寝不足ですか」

 ピエールが憮然として、コーヒーカップを置く。

 執務室のソファーの背もたれに体を預けて目を閉じていたアレクサンドは、チラリと片眼を開けた。

「お前が淹れたのか?」

「そーですよ。〝専属侍女〟が〝専属夫人〟になっちゃいましたからね」

 口を尖らせるピエールは、どうやらルルに恋心を抱いていたらしい。

「まったく。ここまで手が早いとはびーーっくりですよ」

 笑いながら体を起こしカップを手に取る。

「残念だな。もたもたしているお前らが悪い」

 ピエールだけじゃない。実は城内の多くの男どもがルルに言い寄っていたらしい。

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