復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ルルはすべて笑顔で断っていたようだが。

「結局、高嶺の花だったんだなぁ」

 ピエール、マロ、そしてカンタンにはルルがルイーズだと話してある。

 ゴーティエ公爵が確認し、母の遺品をきっかけに記憶を取り戻した経緯もすべて話して聞かせた。

 だが、今はまだ秘密である。ルルはあくまでも西国の公女だ。

 どちらにしろ、高嶺の花に違いない。

「あさってには帝都に出発する。ぼやいてないで、準備は頼むぞ」

「はーい。わかりましたー」



 ルルがルイーズだった。

(この喜びは誰とも分かちえないだろうな)

 ルイーズを助けたいという気持ちとルルを愛しているという想いがせめぎ合い、鬱々としていたのだから。

 ルルが記憶を取り戻した瞬間、あの場にゴーティエ公爵がいなければ、アレクサンドが彼女に抱きついていただろう。

 図らずも親子の抱擁を見守る形になってしまったが、あのときアレクサンドは、これで思い切り堂々とルルを愛せると、世界に向かって叫びたい気持ちだったのである。

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