復讐は蜜の味 ～悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで～

　まだ寝ている、かわいいルルの寝顔にキスをして。などと浮足立ちながら手にした花束を見る。

　今日も朝から続々と祝いの品が届いていて、この花束もそのうちのひとつ。淡いクリーム色からピンクに変わる花弁のルルのように可憐な薔薇だ。

「閣下、この度はおめでとうございます」

「ありがとう」

　今朝からこの調子でアレクサンドとすれ違う誰かしらが声をかけてくる。

　こんなふうに使用人たちが声をかけてくるのは初めてだ。

　だがそれも嫌ではない。

　三階の寝室に行くと、部屋の入り口に護衛の騎士がいる。

「ルルは中か？」

「はい。まだ一歩も出られていません」

　にんまりと頬を緩め、扉を開けた。

　掃除をしていたらしい侍女が振り向いて、人差し指を口もとにあてた。

　見ればカウチソファーに寄りかかるようにして、ルルはすやすやと眠っている。室内用のドレスに着替えているところをみると、いったんは起きたのだろう。

「朝食はとったのか？」