復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「昼食をとったら、また寝るといい」

「大丈夫。起きます」

 よいしょ、と上半身を起こすルルの頬に手を伸ばす。

 キスをしたい衝動に駆られるが、甘くかわいらしい唇を吸ったら最後、また押し倒したくなる自信がある。

 唇をあきらめ、頬にキスをして、花束を取った。

「さあ、どうぞ」

「まあ綺麗。こんな素敵な薔薇、初めてです」

 フフッとうれしそうに花束を抱えるルルを横から抱い寄せた。

「祝いの品が続々届いているぞ」

 振り向いたルルの表情が微かに曇る。

「なんだか申し訳ないです」

 うつむきがちに薔薇を見つめる彼女の微笑みは、いまでも壊れてしまいそうに見えた。

(ルル?)

 ふと思い出した。

 公爵邸でハンカチを広がったあの夜。

 晩餐のあと、風にあたりたくなり庭園に出た。

 花を愛するマリィが手をかけたというだけあって、様々な花が咲く美しい庭を散策しながら奥に進むうち、彼女の姿が見えた。

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