復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 声をかけようとしたが、肩が震えているのに気づき、その場を離れたのである。

 なんとなく気になり、彼女が邸内に戻るのを見届けた。

 ドレスのポケットから落ちたハンカチを手に取ったとき、濡れていると気づいた。やはり彼女は泣いていたのである。

 それなのに、ハンカチを受け取る彼女は、明るい笑顔を向けた。

『ありがとうございます』

 今のように壊れそうな笑顔で。

「なぜだ……」

 不安になり、頬を両手で包み込む。

「なぜ、申し訳ないと思うんだ?」

 困ったように眉尻を下げたルルは「それは」と口ごもる。

「嘘をついていますから」

「違う。戦うための方便だ。それに俺たちの結婚は嘘じゃないぞ?」

 ルルの瞳が揺れる。

「お前と俺は結婚したんだ。嘘も、悲しみも、喜びも。これからはお互いに共有する。お前は、ひとりじゃないんだぞ?」

 我慢せずに泣いたらいい。いっそ、思い切り泣いてほしいと思う。

 儚い笑顔よりはずっと。

「ウサポンだっていましたし」

「え?」

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