復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 ルルは今にも泣きそうな笑顔で「大丈夫ですよ?」と首を傾げる。

「魔獣と仲良しになったりして。私はこうみえて実は強いんですから」

「素直じゃないな」

 なぜ泣かない?

 泣くどころか、ルルは明るい笑顔を向ける。

「今後〝大丈夫〟は禁止だ」

「そんな」

 ギロリと睨むと、横から咳払いが聞こえた。

「し、失礼いたします……」

 振り向くと、いつの間に入ってきたのか、料理を載せたカートを前にして、侍女とマロが所在なげに立ったいる。

「お食事の準備をしてよろしいでしょうか……」

「――ああ、頼む」

 顔を見合わせたルルが照れくさそうに頬を染めた。

(まったく、お前ってやつは)

 あきらめたように溜め息をついたアレクサンドは、ルルの頬を軽く摘まみにっこりと笑顔を返した。

 焦りは禁物だと、自分に言い聞かせながら。



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