復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 いくらアレクサンドに力があっても、所詮は野暮ったい田舎者と思われては失敗だ。

 なんだかんだいいつつ、ディートリヒを皇帝として認めているのは、彼の風貌が帝国の顔として恥ずかしくない威厳を備えているからである。

 いかに品よく、圧倒的財力とセンスを見せつけるかが、腕の見せどころだ。

 ルルは大公夫人としての責任を重く心に刻んでいた。

「アレックスの服も私に任せていただけますか?」

「もちろんだ。なにしろ俺にはさっぱりわからないからな」

 今彼が身につけている衣装もルルが選んだ。

 ジャケットは黒をベースとし、白と赤を利かせ、アクセントに髪と同じ金を使っている。

 領地にいるうちから、帝都でもっとも人気のあるデザイナーに注文しておいたものだ。

 サイズを送っておいただけで、彼にピッタリの服を仕上がっていてタウンハウスに届いていたのだから、さすが一流の仕事である。

 もっとも、圧倒的美貌ゆえ、彼はなにを着ても似合うが。

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