復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 彼に恥をかかせないためもあるが、ルルは精一杯楽しもうと思っていた。

「宝石も遠慮なく、ダイヤだろうがルビーだろうが買うといい」

「ありがとうございます」

 大公家は領地でも質素な暮らしをしてきたため、資産はふんだんにある。

 結婚してすぐ、カンタンから大公家の財政状況を説明されたときは本当に驚いた。ゴーティエ公爵家も豊かだったが、桁が違う。

 凄いのは、アレクサンドがひとりで築き上げたという事実だ。

 魔獸のいる辺境の地に、初めて足を踏み入れたとき、彼はどんな心境だったのか。

 何十年と放置され荒れ果てていた烏城で。

 あの日、ルルは彼のために泣いた。

 そのときの涙を思い出し、喉の奥が苦しくなる。

「そうだルル」

 階段を上る前に立ち止まったアレクサンドは、ポケットから小さな箱をとりだした。

「このアメジストには、意外と強い魔力が効いているらしい。ブレスレットに作り変えておいた」

< 171 / 202 >

この作品をシェア

pagetop