復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 大公領に来たときのように、変装してくるならば会談がうまくいかなかったことになるが、父は堂々とゴーティエ公爵として現れた。

 連絡があった通り、会談はうまくいったのだ。

 ホッとして、ゆっくり息を吐く。

 使用人たちはルルがルイーズだと知らない。

 あくまで大公夫人として客をもてなさなければならず。ルルは駆け出したい気持ちを静めた。

「お客様がいらしたわ。客間にお通ししてね」

「はい、奥様」

 アレクサンドはなにも言わないが、ルルと公爵の時間をつくるために、午後の予定をいれたに違いなかった。

『夕食までには帰ってくる。三人で一階に食べような』

 時間はたっぷりある。

 客間にはすでに父、ゴーティエ公爵がいて、父もまた他人行儀な挨拶をした。

 ふと、宮殿でもそうだったな、と思い出す。

「さあどうぞ、おかけください」

 お茶を出すと、前もって伝えてあった通り、使用人たちは客間を出る。

 ふたりきりになってようやく、ルルは肩の力を抜いた。

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