復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「お父様、ディートリヒには疑われずに済んだの?」

「大丈夫だ。最初はルイーズに会わせてもらってから考えるとつっばねたんだが、好条件を並べてな。ルイーズは偽者だと先に白状したよ」

 彼にしては珍しく、ルイーズにはかわいそうなことをした、申し訳なかったと、謝ったという。

「犯人はあくまでもあの場で殺された実行犯の侍従だと、とってつけたような理由を言っていた」

「かわいそうに」

 侍従には弱みがあった。彼はあの事件で一緒に殺された側室の愛人だったのだ。

 おそらくディートリヒに証拠をつかまれ、身動きが取れなかったのだろう。

「ディートリヒは自分も被害者だと泣いたんだ。保身のためとはいえ、涙まで流せるのかと呆れたよ」

 目に浮かぶようだ。

「あの人は自分の言葉に酔えるから」

 言いながら本気で被害者の気分にでもなったのだろう。

 彼の本質を知らない人は、簡単に騙される。

< 175 / 202 >

この作品をシェア

pagetop