復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 そうやってルイーズもまた悪女に仕立て上げられたと思うと、嫌な気持ちが胸に広がってくるが、ルルは振り切るように身を乗り出した。

 テーブルの上にある皿を父の前に差し出す。

「お父様、さあ召し上がって。シェフに焼いてもらった、お父様が好きなバターと塩がきいた甘くないクッキーよ」

「ありがとう」

 父がクッキーに手を伸ばすと、ルルも一枚取った。

 ほろほろと口の中で崩れるクッキーは、母マリィも好きだった。

 公爵邸の中庭で、三人揃ってお茶を楽しんだ。

「ディートリヒが用意したルイーズは、顔だけ見ればお前に似ていた。だが表情も声も仕草も、なにもかもが違う。あれで通ると本気で思っているのか」

 それにはルルも苦笑した。

「彼は世界一頭がいいと思っているから」

「ははっ、おめでたいな」

 父は笑うが、ディートリヒはたぶん本気で思っているだろう。

 権力が彼を誤解させているのだ。

「お父様、閣下の復讐が済んだら、またふたりで一緒に暮らしましょう?」

 父は怪訝そうに首を傾げる。

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