復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「おまけに私は、贅沢三昧の庶民の敵というレッテルまで貼られたわ。毒殺の犯人という汚名だけは免れても、もと皇太子の婚約者には変わりないから」

「ルル……」

 父の瞳が滲む。

「お父様、大丈夫よ、私。今、とっても幸せなの」

 うつむいて涙を流す父の肩に、ルルは手をかけて励ました。

「大公夫人として、一生分の幸せを満喫しているのよ。だから大丈夫。ルイーズに戻ったら、今度はお父様と幸せを掴むから」

 込み上げてくる涙を飲んで、ルルは精一杯の笑顔を父に向けた。

(今はまだ泣くときじゃない)

 ルイーズに戻ったとき。

 アレクサンドが無事、復讐をとげるときまで、決して泣かないと自分に言い聞かせる。



「お帰りなさい」

「公爵は?」

 アレクサンドが帰ってきたときには、ゴーティエ公爵はいなかった。

「急に用事ができたらしくて、ついさっきお帰りになったの」

 本当は用事ができたわけではなく、泣かずに顔を合わせる自信がないからと帰ったのである。

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