復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「舞踏会には一緒に行く約束をしたから、お話はそのときにって」

「そうか。お前はゆっくり話ができたのか?」

「はい」

 隣に立ったアレクサンドは「それならよかった」と、にっこりと笑みを浮かべる。

 そして掴めとばかりに肘を折りルルに向ける。

 ルルは照れながらそっと手を伸ばして、アレクサンドの腕を掴む。

 寄り添って歩くふたりは、ときおりお互いを見つめては微笑み合う。

 初々しくも、幸せに溢れている姿に、使用人たちの頬もほころび、大公家のタウンハウスは春のような暖かさに包まれた。

「食事の前に、散策しよう」

「はい」



 タウンハウスはとても広い。

 そびえ建つ烏城とは違って、コの字型をした三階建ての大きな邸だ。ひと部屋が広いとはいえ、ゆうに五十はありそうだ。

「昨日、東にある庭園を散策しました。見たことのない花がたくさんあって、とても美しくて感動しました」

「あの庭園は〝常春の庭〟と言うんだ。スリジエール公国の草木が多く植えてある」

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