復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 スリジエール公国とはアレクサンドの母の国だ。

 常春の庭と聞き、ルイーズの母が言っていたのを思い出す。

『皇后陛下はとても美しくてお優しい方だったのよ。いつも春のような庭園をお造りになってね、一年中花が咲いているの。幼い皇子も一緒に私たちはよくそこでお茶を楽しんだわ』

 ルルが皇太子の婚約者として宮廷にいったとき、常春の庭を探したがなかった。

 聞けばディートリヒの母が作り変えてしまったそうだ。

「以前宮廷にあった母上の庭園を模して造らせたんだ」

「そうでしたか」

 アレクサンドは懐かしそうに目を細める。

「公国は春のような国なのですね」

 余計なことを思い出させてしまったかと肩を落とし、歩く廊下には月明かりが差し込んでいる。

 壁際の床には、光を発する魔法石が埋め込まれていて幻想的だ。

 こうして歩いている今が、幻のような気がする。

「ここだ」

 アレクサンドが足を止めたのは、裏庭が見下ろせるバルコニーだった。

「あれは……」

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