復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 月明かりを浴びて金色に光る不思議な木と、月を映す池があった。

 この世のものとは思えぬ美しさに、驚きが口を突いて出る。

「なんて綺麗なの」

 我を忘れて目が釘付けになる。

「あの木は?」

「精霊王が建国を祝して植樹したトネリコだと言われている」

(なんですって)

 ルルが驚くのも当然である。

 トネリコはどこでも見かけるが、輝くトネリコは見たことも聞いたこともないし、精霊王どころか、そもそも精霊の存在すら伝説の中だけの存在だと思っていた。

 だが、この不思議な木を目にすれば存在を信じざるをえない。

「精霊は本当に存在しているのですね」

 アレクサンドは「俺は会ったことはない」とだけ答えた。

 否定しないのだから、彼も精霊王の存在を肯定しているのだろう。

「この木の親となる木は宮殿の庭にあって、祖父が子どもの頃には、トネリコの周りにいる精霊を見かけたらしい」

 ルルは「まあ」と目を丸くする。

 なにもかも初めて耳にする話だ。光るトネリコも実在する精霊も。

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