復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 豪華でありながら、胸元のレースも腰を絞り広がったアンダースカートも白というスッキリした仕上がりだ。

 髪は耳がぎりぎり隠れるように後ろに流し、後頭部の下の方でまとめる。これは皇太子の婚約者ルイーズであった頃に、よくしていた髪型である。

(瓜二つだわ。当然だけれど)

 ルルはいくらか頬をこわばらせて鏡を見つめた。

 ディートリヒはどんな顔をするだろう。

 彼の冷酷な微笑を思い浮かべ、自ずと背中に緊張が走る。

 部屋を出て、一階に下りるとすでに出掛ける準備を終えたアレクサンドと父、ゴーティエ公爵がいた。

 ふたりともルルを見るなり相好を崩す。

「綺麗だよ。ルル」

 父も「ええ本当に」と、眩しそうに目を細める。

 アレクサンドか父、どちらかが、必ずルルの側にいる。そのほかにもピエールとマロも前後を固めるという万全の体制で挑む。

 だから怖くはない。



「まぁ」

 舞踏会の会場に足を踏み入れた途端、会場には沈黙が広がり、波が押し寄せたようにざわつき始めた。

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