復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 そこかしこから〝閣下だわ〟〝ゴーティエ公爵と一緒?〟という言葉が聞こえる。

 なかには〝彼女、誰かに似ていない?〟と言う声も。

 ルイーズだった頃、最後に舞踏会に出席したのは、事件の前の日だった。

 つらつらと前世の記憶を思い出し溜め息をついたルルは視線を上げ、まったく変わっていない荘厳な大広間に視線を巡らせる。



 まわりを固められているおかけで、誰もルルには話かけてこない。

 アレクサンドや父が、誰かしらと話をしている間。

 ルルは、皇太子の婚約者だった頃を思い返した。



 ディートリヒとの晩餐は毎日恒例となっていた。

 とはいえ形ばかりの夕食会にディートリヒが顔を見せるのは三日に一度程度。ルイーズが席についてから知らされるので、彼が姿をみせるかどうかわからないまま席についたのである。

(会う度に地味だと言われたのよね)

 皇族は皆の憧れなのだから、宝石をたくさんつけて煌びやかでなければいけないと言われ続けた。

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