復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 俯き震える彼女たちは口を閉ざす。

 嫌な予感がして『まさか殿下に――?』と聞いた。

『滅相もございません。わたくしの判断でございます』

 前にでたのは侍女長だった。

『ルイーズ様にうまく皇室の常識をお伝えできなかったこの者たちのミス。次にこのような失敗がありましたら、無駄な耳を切り落とし路地裏にでも投げ捨てなければなりません』

 そのとき、ようやく悟った。

 微笑みの後ろに隠れた残虐性。目の奥の冷たさは気のせいではなかったのである。

 侍女を守るため、それからルイーズは言いなりになり、ディートリヒの思惑通りの派手で金遣いが荒い悪女のイメージがついていったのだ。

 辛い思い出に胸が苦しくなる。

 だが、ルルは顔をしっかりと上げて大きく息を吸い気持ちを落ち着けた。

 恐怖に負けてはいけない。

 なにを言われても、鋭く見つめられても。今度こそ負けない。

 あの男に勝たなければ。

 緊張感からか、ルルの喉がゴクリと音を立てる。



 音楽が止まった。

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