復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 いよいよ皇帝ディートリヒの登場である。

 ディートリヒはいつものように白い衣装で現れた。

 昔からそうだ、

 白という色が持つ潔白なイメージに自分の印象を重ねようとしている。

 人々がざわつく。

 その理由は、ディートリヒの後ろから着いていく〝ルイーズ〟にある。

 ルイーズの象徴、長い銀髪。瞳の色までは確認出来ないが、紫なのだろう。

 我が身ゆえ客観的には比べられないが、あれでは、といくらか気の毒になった。

 歩き方すらマスターできなかったらしい。あるいは緊張からなのか、背中は丸めているし、足の動きがぎこちない。見ている方がハラハラするほどだ。

 それでもなんとか転ばずに席にたどり着いた彼女は、いきなり座ろうとし、ディートリヒが慌てて彼女に挨拶をさせた。当然その挨拶もがたがたである。

(きっと平民の女の子なのね……。私に似ているだけでかわいそうに)

 次にディートリヒが簡単な挨拶を初めた。

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