復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 話の途中、アレクサンドに目を向けた彼は、隣に立つルルを見て一瞬固まった。

 ディートリヒは視力がいい。

 髪と瞳の色が違えど、ルルにルイーズを重ねたのだろう。

(あなたならすぐに気づく髪形にしたんだもの。当然よね)

 相当動揺したのか、侍従に声をかけられ、慌てて挨拶の続きをした。

「ルルに気づいたな」

 アレクサンドがクスッと笑う。

 ダンスを促す音楽が始まる。

 本来ならディートリヒとルイーズが最初に踊るはずだが、侍従がアレクサンドに声をかけてきた。

「閣下、代表して最初に踊っていただけますか」

 偽者ルイーズはダンスをマスターしていないのだろう。

「わかった」

 アレクサンドがルルを振り返る。

 烏城で、タウンハウスで、何度となくふたりで踊った。

 戦地で過ごしていた彼は社交ダンスを踊る機会がなかった。実践あるのみと、ルルが誘って踊ったのである。

 とはいえ彼はソードマスターだけあって勘がいい上に、教養として基本は身につけてはいたため、最初から上手だった。

 なので、練習というより楽しむために踊った。
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