復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~

「さあ、踊ろうか」

「はい」

 アレクサンドとのダンスは楽しい。

 安心して体を預けられるから、伸び伸びと踊れる。

 自分中心だったディートリヒとのダンスとは大違いだ。

「ルル。お前が一番綺麗だ」

「ありがとう。でもアレックス、あなたが一番素敵よ」

 女性たちの視線は彼について釘付けだ。

「相変わらず口がうまいな」

「だって本当だもの」

 手を繋いだまま、体を離して、くるくると回ると、アレクサンドもふざけてルルを思い切り後ろに反らさせる。

 周りから歓声が聞こえた。

「社交ダンスがこんなに楽しいとはな」

「ドラゴン祭のダンスも楽しかったわね」

「ああ。また踊ろうな」

 ええ、と答えたが、次はないかもと思った。

(それでもいいわ)

 この一瞬を精一杯、好きな人と過ごせれば。それだけで――。

 ルルには周りの目もなにも関係なかった。



 ダンスが終わると、一斉に拍手が沸き起こった。

 ハッとして見回せば、皆が笑顔で見ている。

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