復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「いやー、素晴らしい」

 すぐ近くにいたモラン公爵が満面に笑みを浮かべて寄ってきた、

 ヒゲをたくわえた彼は、ルルの祖父ともいえる年齢で、強面で知られている。こんなふうに明るい笑顔を向けるのは非常に珍しい。

 周辺に立つ貴族たちも、驚いた表情で見ている。

「閣下の奥方がこんなにかわいらしい方とは」

「だろ? 帝国一の花嫁だ」

 すかさず自慢げにルルの腰を抱くアレクサンドに、ルルは羞恥心で真っ赤になる。

 人目を気にしないつもりでいたが、その反面あまり目立ちたくなかった。ディートリヒにさえ認識してもらえばそれでいいのだから。

 あはは、とモラン公爵が豪快に笑う。

「いいですな、若者は」

 そのままアレクサンドとモラン公爵が話を始めると、ピエールが、後ろからルルに耳打ちする、

「モラン公爵も、なにもかもご存知です」

 挨拶をしなかったのはそのためかと納得する。

「陛下がガン見してますよ」

「えっ……」

 ディートリヒが座っている玉座はルルの後ろになる。

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