復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「兄上、お久しぶりですね」

 ディートリヒはにっこりと微笑みかける。

「ああ、父上の葬儀以来だな」

「戴冠式に出席していただけず、寂しかったですよ」

 アレクサンドは「ははっ!」と、大声で笑った。

 異様な笑い声に驚いた皆の動きがとまり、会場が一瞬で静寂に包まれる。音楽もダンスも、雑談も中断した。

「出席するわけがないだろう? 俺はお前が皇帝になるなど認めちゃいないからな」

 ディートリヒの顔が真っ赤になり、玉座の肘掛けを持つ手が震えているのがルルにもわかった。

 ルルとて、この状況に驚いている、

(閣下?)

「お前の隣に座る女はなんだ。お前が陥れ、名誉を傷つけ、死に追いやったルイーズ嬢の身代わりか?」

「な、なにを――、こ、近衛兵! こ、この無礼者を捕らえよ!」

 ディートリヒを守るように近衛兵がぐるりとまわりを固める。

 ルルは勇気を出して一歩前に出た。

 指にはめた魔法の指輪を外した。

 その瞬間、髪と瞳の色が、もとの色に戻った。

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