復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 実は今朝起きたとき、色が戻っていたのだ。まだ西国の公女である必要があるため、アレクサンドが指輪を用意してくれたのである。

「生きていて、驚きましたか?」

 驚愕を隠しきれないディートリヒは、わなわなと震える。

 隣の席にいた偽者ルイーズは、彼女なりの意地だったのか。立ち上がってルルを指差した。

「わ、私が本物のルイーズよ! 偽者はあんたのほうでしょ!」

 失笑のざわめきが立った。

 あきらかに声も違うし、いくら動揺しても公爵令嬢が〝あんた〟などと人前で口走るはずがないのに。

「お前は黙っていろ!」

 たまりかねてディートリヒが怒鳴りつけた。

 偽者ルイーズは驚きのあまり転び、床に這いつくばる。

(かわいそうに……。あの子はあなたを助けようとしたんじゃない)

 大声をあげて床を叩き、彼女は泣き叫ぶ。

「私がルイーズなのに!」

 皇后になる夢を見たのだろう。哀れな彼女をディートリヒは無惨にも近衛兵に連れて行くよう命じた。

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