復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 対比するように、新皇帝となるディートリヒの功績が列記してある。

 皇太子時代の実績。戦争孤児が安心して暮らせる孤児院を作る。干魃により税を免除。市民のための療養所開設――。

〝賢帝ディートリヒに栄光を〟



 どうしてこうなってしまったのか。

 ルイーズの瞳から落ちた涙が、新聞にポタリポタリと落ちた。

 声を殺すうち、牢番の「あっ!」と、驚いた声に振り返ったルイーズの目が、大きく見開かれる。

「殿下……」

 ディートリヒが鉄格子の前に立つ。

 牢番を下がらせた彼は、ルイーズを振り返った。

 皇族ならではの黄金の髪に明け方の空のような青い瞳。

 彼の態度はいつだって紳士的だった。

 困ったことはないかと、いつも穏やかな微笑みを絶やさず、気遣ってくれる。

 少なくとも信じようとしていた。

 婚約者として宮殿に入るまでは――。

「殿下、なにかの間違いです! 私はなにも」

 ディートリヒは、困ったように片方の眉を歪める。

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