復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 そうですね、とピエールは考え込む。

「戴冠式に閣下が参列しなかったのを気にかけているようでした」

 ルイーズ事件以来、アレクサンドは一度も宮殿に行っていない。

 父の葬儀は出席したが、帝都の外れにある神殿で行われた。帝都にあるタウンハウスに数日滞在しただけで領地に戻っている。

 ディートリヒの戴冠式には、戦地から離れられないと理由をつけて欠席したのだった。

「口にはしませんが、いまだに貴族たちの疑惑を払拭できずにいるようです。必死で世論を操作しようとしていたますが、誰もがゴーティエ公爵の人柄をわかっていますからね」

「当然だ。公爵が父の毒殺など企てるわけがない」

 忌々しげにアレクサンドは吐き捨てる。

「皆、あいつが思うほどバカじゃない。目も耳もある」

「ええ。結局、毒の入手経路などはっきりとした明白な証拠を挙げられず、ルイーズ様は幽閉。公爵は爵位の剥奪と領地没収に留まりましたからね」

 ディートリヒはルイーズも公爵も一気に斬首刑までもっていこうとした。

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