復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 そのままの勢いで勢力図を塗り替えようとした彼の思惑は、最初から躓いたのである。

「閣下を推す声が依然として根強いのは事実です。しかもその声が民衆から挙がっているので、弾圧するわけにもいかず、焦っているようですよ」

「民衆? 帝都のか?」

 ほぼ戦地にいる俺がなぜ民衆に、とアレクサンドは眉をひそめた。

 領地民ならいざしらず、帝都の庶民とは接点がない。

 ピエールは「領地の栄えと兵士ですよ」と答えた。

「ここは税金も安いうえに社会福祉も充実。繁栄する一方の領地もですが、閣下とともに戦った兵士は、閣下の人となりを知っていますからね。そして、彼らの多くは帝都に親類縁者がいる」

 それはゴーティエ公爵も同じですと、ピエールは続けた。

「彼らは公爵の素晴らしさを知っていますから」

 ゴーティエ公爵はアレクサンドの剣の師匠でありソードマスターである。

 帝国を強国にしてきたのは、ゴーディエ家の剣あってこそだ。

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