復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 いまでこそアレクサンドが先陣を切っているが、アレクサンドがここまでくるには彼の指導があればこそだった。

 ゴーティエ公爵は三年前、戦地で利き腕を負傷し一線を退いているが、勢いも迫力も衰えていない。

 剣の弟子はアレクサンドだけでなく多くいるし、皆が重要ポストについている。

 それだけじゃない。公爵は領地の治政に力をいれていた。

 領地民の信頼も篤く、ルイーズも愛されていたようだ。皇帝毒殺の容疑をかけられたときも、領地民が公爵家の無実を訴え、皇宮に押し寄せたのである。

 ただし、貴族間は、ルイーズについての意見が割れているらしい。

 ルイーズ・ゴーティエ公爵令嬢。

 彼女の母マリィは、いっときアレクサンドの乳母だった。

 まだよちよち歩きの幼いルイーズを抱いて皇宮に連れてきたことがある。

『殿下、私の娘ルイーズです。ときどき遊んであげてくださいね』

(そういえばあの子の愛称はルルだったな)

 マリィが幼いルイーズを、ルルと呼んでいたのを思い出した。

(ルル……)
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