復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
思いに耽っていると扉が静かに開いた。
護衛騎士が開けた扉から入ってきたのはルルである。
彼女は無言のまま頭を下げると、コーヒーやお茶の用意を乗せたカートを押して入ってきた。
時計を見れば、昼食を頼んだ午後一時までまだしぱらくある。
ひとまず飲み物を届けにきたようだ。
「あれ、ルル」
ピエールが親しげに声を掛けた。
「秘書さま。こんにちは」
ルルはにこにことピエールに微笑みかける。
「知り合いだったのか?」
言ってすぐ、理由に思い当たった。
「僕は彼女たちと一緒に食事を取っていますから」
「そうだったな」
ピエールは邸を持たず、城に寝泊まりしている。
不在がちなアレクサンドに代わり城を管理するためもあるが、特権意識が低く、使用人たちと気さくな関係を築いているのでルルとも親しくなったのだろう。
「閣下はコーヒーでよろしいですか?」
「ああ」
「僕は甘い紅茶で」
聞かれてもいないのにピエールが答えた。
「はい。わかりました」