復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 カートの上で、ルルはコーヒーを淹れ始める。

 その様子を横目で流し見ながら、やはり面差しに見覚えがあるような気がした。

 痩せ気味だが背格好は普通。美人ではあるが、大きな個性がある顔立ちではない。身体的にもこれといった特徴はないようだ。

 強いていえば髪だが、帝国には様々な髪色の者がいる。

 緑色の髪も瞳も珍しいほうではあるが、それだけで記憶に残るほど異質ではない。

(誰かに似ているんだな……)

 誰にと考えて、ふと思い出した。

 乳母のマリィを考えていたからだろうか。マリィの面影が重なる。

 マリィの娘ルイーズに……。

(ルルという名前が、愛称だった可能性は十分ある)

 考え込むうちに、ジッと見ていたらしい目が合ったルルが、戸惑いの表情を見せた。

「あ、えっと……」

「ん?」

「コーヒーは、どちらに置けばよろしいですか?」

 いつの間にかコーヒーができあがったらしく、書類が積み上がった机を見て彼女はたじろいでいる。

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