復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「飲み物は机じゃなくそのテーブルの上でいい。今後もそこに置いてくれればいいから」

「はい。承知いたしました」

 ルルはにっこりと微笑んで、アレクサンドが指をさしたテーブルの上にコーヒーを置く。

「僕のお茶もそこでいいからね。おかわりできるようポットも置いていって」

 ピエールが口を挟み、ルルはクスッと笑う。

「はい」

 お茶を出し終えたルルが部屋を出ると、ピエールがうれしそうに振り向いた。

「ルルに決めたんですね」

「ずいぶん気に入ってるみたいだな」

「そうですか?」

 つんと澄ますが、ピエールがさっきのようにわかりやすく笑顔を向けるのは珍しい。

「あからさますぎるだろ」

 ピエールも美人には弱いのか。

 こんな田舎ではなかなか見かけないような美しい娘であるから、しかたないかもしれないが。

(まったく)

 呆れたように溜め息をつくと、ピエールは、彼女は特別なのだと言う。

「見かけたんです」

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