復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 髪色や瞳を変える方法はいくつかあるが、魔法使いでない彼女が瞳の色まで変える方法は、魔道具か魔法薬だ。

 魔道具は身につけていないし、薬の効能には期限がある。長くて一日だ。

 発見されてから二週間寝込んでいる間も変わらなかったとなると、薬だとは考えにくい。

「ピエール。あの娘、誰かに似ていると思わないか?」

 先入観を持たないよう、あえて〝ルイーズ〟にとは言わなかった。

「どうでしょう」

 ピエールは首を傾げる。

「整った顔立ちではありますが、個性的ではないですしね」

「まあ、そうだな」

 考えてみると、上流貴族ではないピエールが公爵令嬢のルイーズと接する機会はなかったに違いない。少なくとも声は知らないはずだ。

 アレクサンドは記憶にあるルイーズを脳裏に呼び起こした。

 少なくとも声は似てると思う。

 髪型を整え化粧を施し、ドレスを着たルルを想像してみた。

 似ているような気がするが、言い切れる自信はない、

 やはり髪色と瞳の違いは大きい。

(他人の空似か……)



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