復讐は蜜の味 ～悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで～

　気を取り直し、カタカタと音を立てながら進む。

　廊下の先には大きな魔法陣があり、そこに入ると厨房のある一階に行けるのだ。

「ルル」

　振り返ると、侍女長が足早にやってきた。

　はいと返事をするより先に質問が飛んでくる。

「閣下の様子はどうです？　ルルが担当になって、今日で三日目ですよね？」

　食いつかんばかりの勢いだ。

「えっと。様子ですか……」

　なにをどう答えたらいいのか。今朝の様子が普通かどうか普段のアレクサンドを知らないルルには判断つかない。

「お元気そうでしたよ？　お顔の色もよく、お食事は完食されていましたし」

　侍女長はじれったそうに「そうではない」と言う。

「あの方はすこぶる丈夫なの。風邪ひとつひかないわ」

「そうでしたか」

　ならばなにを答えればいいのかと首を傾げる。

「コーヒーが不味いと言われたりは？」

「いいえ。コーヒーのお味はいかがですか？と聞くと、頷いてらっしゃいました」