復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
皺がないようにピンと張る。
『ルルって貴族の暮らしぶりがわかっているみたいね』
仕事を教えてくれた先輩侍女のネージュは、貴族の生活ぶりにひとつひとつが驚きの連続だったらしい。
『いくら貴族様でも、シーツなんて少しくらいシワがあったっていいと思っていたし、お風呂に香油を入れるなんて知らなかったわ』
ルルは『カンタン様のお屋敷でしばらくお世話になったからですよ』とごまかしたが……。
移動用の魔法陣の使い方は教わったけれど、教わらなくても体が覚えていた。
実は魔法具がランプの代わりに光を発するのも知っていたし、ほかの魔法具なども、聞かなくても全部使いこなせる。
高価な魔法具は、裕福な商人か貴族しか使わない。
カンタン夫人は『あなたはもしかしたら貴族かもしれないわ』とまで言った。
ルル自身には理由がわからないが、身についている仕草からそう感じるのだと。