復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 試しにこの中から状況に合わせてごらんなさいと言われ、接客用、舞踏会用、宮殿での晩餐会用と並べていくと、それを見た侍女長が、服選びは問題ないと言ってくれたのだ。

 大公は自身の服装に無関心らしい。言われるがまま着ると聞いていたが、その通りだった。

(なにを着てもお似合いだなのよね)

 最後に背伸びをしてブローチをつけていると、ふと大公と目が合った。

 それが引き金になり、急に羞恥心に襲われて胸が弾かれたように高鳴ってくる。

(ど、どうしよう)

 ほんの目と鼻の先にある大公の顔。

 彼はニッと口角を上げて、目を柔らかく細めた。

 にっこりと微笑み返したものの、暴れる心臓は飛び出しそうだし、耳まで真っ赤になっていると思う。

 これから衣装替えの度にドキドキのし通しなのかと思うと、密かに溜め息が漏れた。

「安心しろ。今日だけだ」

(えっ!)

 三日目にして、もうクビ?

 溜め息をついたせいで、不満があると思われたのか。

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