復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「も、申し訳ありません、閣下。もう少し頑張らせてください!」

 思い切り頭を下げた。

 このまま辞めるわけにはいかない。

 カンタンや侍女長、皆に応援されてきたのに。

「ん? なにを謝っているんだ」

 顔を上げると、大公が怪訝そうに見つめる。

「もしかして専属侍女をクビになると思ったか?」

「はい。――違うのですか?」

 彼は困ったような表情で髪をかきあげながら、左右にかぶりを振る。

「お前には専属侍女を続けてもらう。もともと身の回りの世話をするマロという護衛騎士もいるんだ。着替えとか風呂で背中を流してもらうのは、同性の方がいいだろう?」

(あ……。なるほど)

 先輩侍女が、よく〝マロがいないから〟と口にしているのを聞いたが、そういう意味だったのか。

「マロは一緒に戦争に行っていたんだ。久しぶりの帰国だから今は休暇を取っているんだが、明日には城に戻る」

「そうなのですね」

 ても、さっきの溜め息は失礼だった。

< 50 / 202 >

この作品をシェア

pagetop