復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
「制服もかわいいですし」

 襟と袖口とエプロンは清潔感溢れる白で、ワンピースは黒というシンプルな制服だがとても気に入っている。

 侍女の仕事は様々で、落ちない汚れに悪戦苦闘したりと大変な仕事もあるが、体を動かして汗をかき、一日の終わりにお風呂に入ったときの充実感と気持ちよさは言葉であらわせない。

「ここで働けて、とても幸せです」

 口にしてから思った。

〝幸せ〟という言葉が心にしみじみと響く。

 今とっても幸せだ。この城でずっと侍女でいたいと心から思っている。

「それはよかった」

「閣下のおかげです」

 ん? と彼は怪訝そうにする。

 言葉が足りなかったのか「閣下が身を粉にして、平和を守ってくださっているから」と添えた。

 もちろんそれだけじゃない。

 帝都のとある貴族の邸から転職してきた先輩の話によれば、貴族はワガママや傲慢な人が多く、こんなに楽しいお邸は珍しいそうだ。

 大公の人柄のせいかこの領地にはそのような貴族はいない。

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